探偵社/興信所の選び方マニュアル

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■ 探偵トラブル例(成功報酬編) ■
 ※これらのケースは相談者の許可を得て、事実と異なる修正をしております。
<F子さんのケース>

 どうも最近、夫が浮気しているようだと感じたF子さん。

 以前にも一度だけ浮気が発覚して「相手の女とは縁を切る」と約束させたのだが、また同じ相手と再燃している様子が携帯メールのやりとりなどから分かった。本当に浮気しているのなら離婚しかない、と考えたF子さんは探偵に依頼して決定的な証拠を取ろうと考えた。しかしパート労働の身では無駄なお金を払う訳にもいかない。ドラマや映画で「成功報酬」という言葉を知っていたF子さんは、成功報酬で受けてくれる探偵社を電話帳から探し、日本全国10ヶ所以上に支社を持つという大きな探偵社に話を聞いてみた。

 話を聞きに行ったF子さんは、指定されたホテルのロビーで探偵社の相談員と会った。親切そうな相談員から「うちは成功報酬ですよ」と言われて安心したF子さん。成功報酬なら失敗してもお金は返ってくるんだし、成功しても夫からの慰謝料で支払いできるだろうと思った。とりあえず預金口座からお金をおろし、前金で155万円を支払った。「安心してください。絶対にいい結果を出しますよ」と言われたF子さんは、ますます探偵社への信頼を強めた。

 約束の2週間を大きくオーバーした1ヶ月後、ようやく探偵社から調査報告書が届けられた。浮気の証拠は取れず、添付されている写真も夫の勤務先や自動車の外観だけ。あとは一人で歩いている夫の後ろ姿を遠くから撮影した程度だった。どうやら調査は失敗していたようで、探偵社もそれを認めていた。

 信用していたけど失敗したら仕方ない、とF子さんは諦め、ここで初めて具体的な返金方法の話になった。当然のように155万円全額が返ってくると思っていたF子さんは、探偵社からの言葉を聞いて驚いた。「まず着手金に該当するのが60万円。そして調査が長引いたので実費が60万円。これらの合計となる120万円を差し引いて、返金額は35万円になります」と探偵社は言ったのである。

 そんなことは初めて聞いたF子さんだったが、この探偵社によれば「そのあたりは最初に説明しましたよ」とのこと。もちろんF子さんは聞いた記憶などないのだが、それを証明する方法がない。そもそもF子さんは155万円もの大金を支払ったにも関わらず領収書すらもらっていなかった。よく調査報告書を読み返してみても、誤字脱字は多く内容もいい加減。
 その後も夫の浮気は続いている様子であり、結局はF子さんが120万円を失ったという事実だけが残ることになった。


 このケースは調査をおこなって報告書も出されているので、詐欺とまでは断定しにくいですが、着手金や実費が必要になるということを意図的に隠していたのであれば悪質な探偵社といえます。F子さんの最初の失敗は、見せかけの会社規模や広告の大きさだけで探偵社を選んでしまった点です。電話帳にしてもインターネットにしても、「○○支社」という形で電話番号やメールアドレスだけしか載せていないところがありますが、その住所地を詳細な番地まで書いていない場合は転送電話という可能性もあります。広告で見る探偵社の規模と実際の会社規模は、必ずしも一致しませんので注意が必要です。

 次に、成功報酬という言葉を「失敗すれば1円も払わなくて良い」とF子さんが思い込んでしまった点も失敗でした。単なる成功報酬と「完全成功報酬」は、名前こそ似ていますが中身はまったく違います。探偵社が成功報酬というのであれば、それが完全成功報酬なのかどうかを確かめるようにしましょう。口約束だけで高額の依頼を決めてしまうと、トラブルが起きた時に困ることになります。もちろん、今回のF子さんのように料金が155万円ということなら、契約書類も領収書もないというのは明らかに不自然。少なくとも普通の探偵社であれば考えにくい対応です。自社の事務所ではなくホテルのロビーで相談員が話をしたのも、あまり良い傾向とはいえません(接客できる事務所を持っていない可能性がある)。

 また、F子さんに対して具体的な調査プランを示さないまま「絶対に結果を出す」と探偵側が言ったのにも問題があります。良心的な探偵社では、そんな無責任なことは言いません。どういう方法・機材・人数で調査して、どういう場合に失敗するリスクがあるか、という情報を依頼者に伝える責任が探偵にはあります。

 さらに残念なことには、肝心な調査力も高い探偵社ではなかったようです。このくらいの調査報告書では浮気の証拠とはいえませんし、明らかな失敗です(これは相手の探偵社も認めていたようですが)。完全成功報酬なら、確実に全額返金の対象になっています。しかし今回のケースでは探偵側が「着手金と実費については説明しましたよ」と言っている訳ですから、きちんとした契約書類を作成してもらっていないF子さんは圧倒的に不利な立場です。(注:平成19年6月以降は、探偵業法により、契約書の交付が業者に義務付けられるようになりましたので、現在は、契約書を発行しない業者はほぼないと思います。本文の事例は、探偵業法施行前となっております)

 「成功報酬」という宣伝を見ただけで安全なイメージを持つのは、あまり良いことではありません。そういう先入観を悪用される場合もあります。成功報酬かどうかに関わらず、「最終的にいくら支払うことになるのか」が最も大切です。その点については、相手の探偵社にも充分すぎるほど確認してから依頼契約を結ぶようにしましょう。

この失敗談から学ぶこと
・「成功報酬」イコール「無料」ではない
・着手金や実費など、失敗しても返金されない部分を確認しておく
・絶対に成功する、といった発言には注意する
・プラス面しか強調しないような業者への依頼は、慎重に考える
・契約書の中に、成功条件等、依頼者に有利な細かい取り決めを入れてもらう



<G子さんのケース>

 G子さんは交際していた男性に「他に好きな女性ができたから別れよう」と言われ、一方的に会うことを拒絶された。

 もちろんG子さんはこんな別れ方では納得できない。電話すら着信拒否されるようになってG子さんの怒りは頂点に達し、どうにかして相手の男性と新しい交際相手を別れさせてやろうと考えた。もちろん自分では何もできないし、家族や友人に頼める話ではない。別れさせ業者という存在を何かの記事で読んだ記憶のあったG子さんは、インターネットを使い片っ端から調べまわり、「あなたに代わって復讐します」という物騒な宣伝文句の探偵社に連絡を取ってみた。

 ホームページに書いてあったメールアドレスに連絡すると、すぐに返事があった。メールで事情を説明したG子さんに対し「別れさせるのは100%大丈夫ですよ」と答えてくれた。料金は実費も含めて60万円。失敗すれば料金をすべて返してくれるという話だった。60万円はG子さんにとって決して安くない金額だったが、これで相手の男に復讐できるのなら仕方ないと思って指定口座へ振り込んだ。

 しばらくすると、その探偵社からG子さんへメールで連絡があった。「相手の男の生活について下調べが完了したので、これから実際の工作に取り掛かります」というのが電話の内容。ちゃんと事前調査までしてくれてるのかと安心したG子さんは、引き続き探偵社からの連絡を待った。‥‥しかし、最初の連絡から2ヶ月が経過しても次の連絡が来ない。「どうなってますか?」と催促のメールを送ってみても返事なし。電話番号はどこにも書かれていない。住所地も市町村名までしか書かれていないので、訪問することもできない。

 結局、振込みしてから4ヶ月以上が経過した後も連絡はなく、G子さんは完全に騙された形となった。警察に被害を届けようにも依頼したという証拠がないし、もし証拠があったとしても「別れさせ工作を依頼して詐欺に遭いました」などと警察に言い辛い。


 最初から詐欺目的の業者に、成功報酬というエサで釣られてしまった典型的なケースです。こんな単純な騙し方で引っかかるはずないと思われるかもしれませんが、今回紹介した例の中では最も事実に近い形で載せました。

 まずG子さんが注意すべきだったのは、メールアドレスしか分からない探偵社に先払いで全額を支払ってしまった点。おそらく別れた男性に対する怒りが大きくて冷静さを欠いていたとは思いますが、「100%大丈夫」というのも疑うべきですし、別れさせ工作で経費込み60万円という安さは不自然です。

 あまり誉めたくありませんが、この悪徳業者の上手いところは、ちゃんとG子さんに一度だけ連絡を取って「しっかり進行していますよ」とアピールしたところです。こうやって信頼感を強めておけば、依頼者であるG子さんが騙されたことに気付く時期をかなり先延ばしすることができます。

 詐欺目的の悪徳業者は、どんな依頼者が騙しやすいか、どうすれば被害届を出されずに済むかという知識が豊富で、作戦も充分に練っています。依頼者としても「別れさせ工作を依頼した」という後ろめたさがあるため、実際に被害を届けられるケースは稀です。そういう意味でも、100%完全成功報酬の別れさせ工作は、まさに悪徳業者にとっては狙い目な依頼といえるでしょう。

 所在地も分からない探偵社に、親切な対応で破格の好条件を提示されて、契約書すら出してくれないのに料金だけは先払い。‥‥そんな不自然なことがあれば、「おかしいな?他の探偵社ではどうだろう?」と疑問を持つように心がけてください。

この失敗談から学ぶこと
・所在地、電話番号、代表者氏名を公開していないのは、実体を隠したい探偵社
・別れさせなど「工作」分野は被害に遭いやすい
・一般的な料金の相場はしっかり調べておく
・経過報告があっても全面的に信用してはいけない
・住所も電話番号も分からない探偵社には、依頼しない
・自分(依頼者)に有利すぎる契約条件があれば疑ってかかること


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